長期優良住宅仕様の紛争事例

住友不動産と新築戸建ての請負契約を長期優良住宅仕様で締結しましたが、その後、引き渡しを受けた建物が長期優良住宅仕様ではなかったことが判明。訴訟からその結果までの一連の事例を綴ります。

・2014年12月28日工事請負契約
・2015年6月23日追加変更工事契約/着工会
 
(仕様を長期優良住宅仕様とする旨で契約)
・216年8月1日追加変更工事契約
・2016年8月3日引渡し

・2020年11月9日 訴訟第1回目期日(住友不動産)

住友不動産から債務不存在確認で訴えられる。

・2020年12月17日 訴訟第2回目期日(我が家)

我が家が住友不動産へ反訴請求。

・2021年4月15日 訴訟第4回目期日(我が家)

日本建築検査研究所の調査結果を裁判所に提出。

内容:
本件建物は、建物自体の性能としては、「長期優良住宅対応」の建物とすることが約されていたが、「躯体天井高さ」が長期優良住宅の認定基準に満たない為、長期優良住宅の認定申請はできないとの説明がなされ、長期優良住宅としての認定申請が行われていない。しかしながら、本件建物では、道路斜線~建物の最高高さ間の距離は665mmである為、構造計算方法(ルート)が変わるだけであって、ハイスタッドとして躯体天井高さを2,650とすることができないなどと云う理由はなく、長期優良住宅の認定申請をすることは可能であった。

契約内容に沿って、「長期優良住宅」の申請が可能となるように設計すべきであった。「長期優良住宅」の申請ができないかのように錯誤させ、変更(誘導)するような行為については、民事的にも不利益を課すべきであり、慰謝料の算定において、考慮されるべきである。

・2021年6月25日 訴訟第5回目期日(住友不動産)
「長期優良住宅対応」の建物とすることが約されていた事実は否認し、長期優良住宅としての認定申請 が行われていないことは認める。

・2021年12月1日 訴訟第8回目期日(我が家)
以下の3点に長期優良住宅仕様である旨が記載されており、長期優良住宅仕様とする合意が存在して いた証拠を提示。
1)「追加変更工事契約書」(乙12)
2)「仕様書」(乙14)
3)「打合わせ記録」(議事録)(乙13)

・2022年1月31日 訴訟第9回目期日(住友不動産)

今までに「瑕疵一覧表」でやり取りをしてきた中、住友不動産から初めて、反論の準備書面が提出される。 我が家が住友不動産の説明により長期優良住宅の申請諦めざるを得なかったが、仕様については天井高以外は全て長期優良住宅仕様とする旨で追加変更契約を締結しており、この旨を以下の通り、証拠として提出した結果、住友不動産は以下のように反論をしてきました。

3)「打合わせ記録」(議事録)(乙13)について

上記が平成27年2月3日の打合せ時に残された議事録です。

「長期優良 申請は取れませんが、仕様については長期優良仕様となります」と明記されています。

住友不動産はこの文言の意味について、以下のように主張をしてきています。

上記メモ(「長期優良住宅 申請は取れませんが、仕様については長期優良住宅仕様」)の意味は「長期優良住宅としての認定を受けることはできないが、ほとんどの仕様については、長期優良住宅認定基準を満たす内容とする」という意味にすぎない。

→そもそも、議事録を「メモ」と呼ぶ住友不動産の代理人は議事録の重要性を認識しているのでしょうか?議事録の記載事項は言い換えれば一種の契約です。

→さらに、なぜか「ほとんどの仕様」という言葉を勝手に付け加えて主張をしてきています。「この建物の仕様については長期優良住宅仕様である」のと「この建物のほとんどの仕様については長期優良住宅仕様である」とでは大きな違いがあります。家という大きな買い物をするのに、これだけの品質格差をつけられて建築されては、消費者としてはやり場のない気持ちにさせられます。住友不動産は日常茶飯事にこのような行為をしているのでしょうか。

→また、ほとんどの仕様が長期優良住宅仕様であるならば、わざわざ議事録に残してもらう必要はありません。勝手に言葉を付け加えていいならどんな解釈にでも塗り替えられます。

1)「追加変更工事契約書」(乙12)と、2)「仕様書」(乙14)について

住友不動産から説明を受けた上で、我が家が賃貸併用の性質上、長期優良住宅の申請は取れませんが、仕様については長期優良住宅仕様とする旨を契約書、仕様書、議事録に「長期優良住宅対応」という文言を追記してもらったことに対して、住友不動産は「契約書や仕様書で記載されている「長期優良住宅対応」という文言は、ただのひな型であり、戸建住宅の確定図を作成する場合に一律に記載されている文言にすぎない」と主張をしてきました。

→この論法からすると住友不動産の契約書は、長期優良住宅仕様とそうでない仕様も、一律に大きく「長期優良住宅対応」という文言が記載されいるということになります。長期優良住宅仕様だと説明を受け、その言葉を信じて契約を交わし、蓋を開けてみたら長期優良住宅仕様とかけ離れた安いスペックで建てられていた。とても納得のできるものではありません。我が家と同じような人が他にどれだけいるのだろうかと疑問でならない。

また、我が家は躯体天井高不足が理由で長期優良住宅の申請が取れなかったがため、確定図の建築概要で長期優良住宅申請欄が「無」=「申請はなし」となっています。これについても、住友不動産は以下のように主張をしています。

「確定図の建築概要で長期優良住宅申請欄が「無」となっていることについては、長期優良住宅の申請を行うとの合意がないことは明らかであり、その前提となる長期優良住宅仕様にするとの合意がないこともまた明らかである。」

→そもそも、長期優良住宅の申請ができないと契約後に説明をされたため、長期優良住宅申請欄が「無」となることは当然であり、申請が取れなかったからといって「長期優良住宅仕様」の住宅とする合意がないとはならない。この住友不動産の主張は、争点を錯乱させる行為以外の何ものでもありません。